視覚障害者がスマートホンを使うためのノウハウ(2014-9-18加筆修正)


私がスマートホンを使い始めた経緯


2012年7月末、今まで使ってきたらくらくホンIV(F883iES)が突然再起動するようになりました。

ドコモショップに修理依頼しようとしたら、「修理なら4〜5万円、らくらくホン7への機種変更でも5万円、スマートホンへの機種変更なら15000円くらい」と言われました。

らくらくスマートホンが発売されたということは、今後はガラパゴス携帯の開発は期待薄のように感じました。

らくらくスマートホンはシニアには使えても、音声ガイドが不充分です。

一般のスマートホンドキュメントトーカをインストールして使っている視覚障害者がいるという情報がありましたので、検討し始めました。

当時はiPhoneに搭載されているボイスオーバーでは漢字変換候補文字を音声化することはできませんでしたし、ずっとドコモの携帯電話を使ってきましたので、iPhoneは選択枝にはありませんでした。 そこで、ドキュメントトーカとの相性が最もよいという評判のdocomo NEXT series GALAXY S III SC-06Dにしました。

後継機種のGALAXY S III α SC-03EGALAXY S4 SC-04Eもそうですが、GALAXYには画面下部にホームボタンが物理キーとして配置され、ホームボタンの左にはメニューボタン、右には戻るボタンがあります。また、ホームボタンを長押しすることで、最近使ったアプリを表示させることができます。機種によってはアプリによって、これらのボタンの位置が動くようですが、必ず同じ位置にあるというのはとても安心です。

※アンドロイドがVer4.4.2にアップデートされ、私が機種変更したGALAXY S5 SC-04Fでもホームボタンの左は最近使ったアプリボタンに変更されました。しかしご安心下さい。メニューボタンはホームボタンの左の長押しで残されました。そして、ホームボタン長押しは検索ボタンになり変更されました。

さらに、ホームボタンで電話に応答したり、電源ボタンで通話を切断、電源ボタン長押しで端末オプション画面を表示、という独自のアクセシビリティ機能があります。他のスマートホンにもホームボタンが物理キーのものはありますが、別のアプリをインストールしないと応答に割り当てられないようです。

ドコモでは他社のアプリについてはサポートしかねるということでしたが、らくらくスマートホンが使えないことを説明し、下記の設定をしていただきました


視覚障害者がアンドロイドスマートホンを使うための設定

これからアンドロイドスマートホンをお使いになる方はおそらくアンドロイド Ver4.4.2以降になると思います。私が使い始めたVer4.04からは設定項目が細分化されていますので、級バージョンのスマートホンをお使いの方は類似の項目を探して設定して下さい。


可能であれば、グーグルのアカウントを取得してからドコモショップに出かけます。グーグルのアカウントは、無料、有償に関わらずGoogle Playにアクセスしてアプリをダウンロードするのに必要です。


設定→セキュリティ→提供元不明のアプリ→インストールの許可


ドキュメントトーカ for Android(990円)をインストール。

ドキュメントトーカ IME(無料)をインストール。

「docomo Palette UI」は、読まないアイコンがあるので、Nova Launcherをインストールし、ホームを変更する。


設定→言語と文字入力→音声読み上げオプション→優先するエンジンで「DTalker TTS」を選択、設定する。

設定→言語と文字入力→キーボードと入力方法→DTalker IMEをONにする。

設定→言語と文字入力→デホルト」のキーボードを「DTalker IME」にする。

設定→ユーザー補助→視覚→「TalkBack」をONにする。(もしドキュメントトーカの音声が聞こえないときは、TalkBackのON/OFFを繰り返しタップして切り替える)

Talkbackは、グーグルが提供するスマートホンのアクセシビリティ機能です。プリインストールされていない機種の場合はインストールが必要です。

「Talkback」の設定で

発信者番号を読み上げるをONにする

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設定→ユーザー補助→視覚→「画面の情報を保護」をONにする

※iPhoneでいうスクリーンカーテンの機能で、電源キーを二回押すことで画面を消灯し、音声ガイドのみで操作できるようになります。


設定→ユーザー補助→視覚→「パスワードの音声出力」をONにする。

※OFF状態では、イヤホンからしかパスワードを出力しません。


設定→ユーザー補助→視覚→「ユーザー補助ショートカット」をONにする。

※オンにすると、電源キー長押しで端末オプションを表示できるようになり、不具合が生じたときに再起動できるようになります。


設定→ユーザー補助→「ダイレクトアクセス」をタップし、ONにする

「talkback」をONにする。

※この設定により、ホームボタンを三回押すことで、音声のON/OFFを切り替えられるようになります。弱視者の場合は、「メガポジ反転」をONにすることで、画面の色とバックカラーを反転切り替えできるようになります。


以下はGALAXYシリーズのスマートホンのみ適用できる設定です。

設定→通話応答/終了をタップする。

「着信の応答方法」を「ホームキーを押す」にする。

「通話の終了方法」を「電源キーを押す」にする。


最後に、再度設定→ユーザー補助→視覚→「TalkBack」をタップし、設定の中の「タッチガイド」をONにする。

※タッチガイドを有効にすると、画面に触れただけではアイコンや文字を読み上げるだけで、実行はされません。画面のダブルタップで実行、スクロールは二本指になります。上記で設定したダイレクトアクセスでTalkBackがOFFになると、音声出力がされなくなると同時にタッチガイドも無効になり、通常通りの操作が可能になります。

高音質音声エンジンたかしとけいこを導入する場合の注意

さらに高音質の音声エンジンドキュメントトーカ たかしドキュメントトーカ けいこをインストールすると、雑踏の中でもスマホを使いやすくなります。

ただ、インストール直後にTTSエンジンとして切り替え設定してしまうと、全くスマホがしゃべらなくなります。

インストール直後に、たかしまたはけいこのアイコンをタップし、読み上げ用辞書の更新を行う必要があります



タッチパネルの操作について

ホーム画面の操作

画面に触れてアイコンを確認し、指を滑らせて、起動したいアプリを見つけたら一度指を離して二回タップ(たたくこと)します。

一画面にアプリが入らないときは、二本指で左右にスクロールさせます。

アイコンを長押しすると、アプリを画面から削除したりアンインストールしたりするためのアラートが出てきます。また、長押しした状態で指を動かすと、アイコンを別の位置に移動させることができます。

ドキュメントトーカIMEによる文字入力

ローマ字あるいは五十音入力ではキーボード上をなぞって入力したい文字が聞こえた所で指を離すと確定できます。

また、テンキーモードでは、文字を左右上下にフリック(はじく)することで、「イ、ウ、エ、オ」などを連打しなくても早く入力することができます。



画面の読み上げ

画面をタップするとフォーカスが当たっている所を読んでくれるアプリについては、画面を二本指でスクロールさせながら読みすすみ、リンクの所でダブルタップして遷移した画面をまた読むことで情報にアクセスできます。

ジェスチャーによる読み上げ

アンドロイド4.1から、画面をL字状にスワイプするジェスチャーに下記の機能を割り当てられるようになりました。また、4.4からは端末の側面のシングルタップ、ダブルタップも使用できるようになりました。



ホームボタンが物理キーになっていないスマホもありますし、通知は長くスマホを使っていても一発で開けないこともあるので、皆さんも使いやすいようにジェスチャーを設定してみて下さい。

私は次のように設定して使用しています。


また、スマホをシェークする(振る)ことでも読み上げを開始できます。

読み上げレベルの設定

画面上を素早く上下上、あるいは下上下とこすると、デフォルト、段落単位、一文字単位に読み上げレベルを調整できます。

そして、右あるいは左に画面をこすると、設定したレベルに応じて画面を読み進むことができます。また、アプリによっては、上下に画面をこすることで、自動的に画面をスクロールさせながら読み進むことができるものもあります。

メールの送受信について

2013年秋から、順次@docomo.ne.jpのメールガクラウドに対応しています。

ドコモメールは、ボタンや画面をタップしても正しく読んでくれませんが、ダブルタップして長押しすることで、ボタンを読んでくれます。

アンドロイド Ver4.4.2からは、ドコモメールの本文は、画面に触れたり上下左右のフリックでフォーカスを移動しながら読むことができます。フォーカスが当たっている所にURLがあれば、ダブルタップしてブラウザを起動してホームページにアクセスすることができます。メールアドレスをタップすると、メールを作成したり電話帳に登録することもできます。


スマホを使っている人同士の場合、無料通話もできるLINE(ライン)を使うほうが手軽ですし、未読か既読かもわかって便利です。



便利なアプリ

初めての所に独りで行くときはナビアプリが便利

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ドキュメントトーカ ボイスナビ」を起動して歩いていると、近くのお店を案内してくれて、散歩も楽しくなります。

目的地は、住所やランドマークをキー入力したり、声で話しても設定できます。

大きなビルは裏口に案内されてしまうこともあるかもしれませんが、一軒家なら行きすぎると「そこでバック」と教えてくれます。

お札や同じ大きさのカードの判別

Google Gogglesは、お札の識別、キャッシュカードの講座番号、クレジットカードの種類を教えてくれる便利なアプリです。

けっこう適当に撮影しても認識してくれます。

外出する前に、当日必要なカードを判別できれば、間違って別のカードを出したり、忘れたりしなくていいと思います。

以前、マクドナルドでEdyとクイックペイを間違えて出してしまったことがありましたが、もうこれからは大丈夫!

バスや電車に乗り遅れないように!

トレインタイマーは、今から乗ることができる列車やバスをタイマーで秒読み表示してくれます。このアプリをインストールしてから、私は点字の時刻表を持ち歩かなくてもすむようになりました。


クーポンで安くお食事

ファーストフードでクーポンを利用できるアプリはたくさんありますが、マクドナルド公式アプリは視覚障害者にも使いやすいアプリだと思います。

週替わり、週末限定のかざすクーポンのほか、スクラッチdeクーポンを毎日起動、スマホの画面をこするとプレミアムローストコーヒーの無料クーポンが当たったりします。無料でコーヒーだけ飲んで帰るのは何となく申し訳ないような気がして、ハンバーガーやポテト、サラダなんかも買っちゃうんですよね。

私はビックマックが当たっても決してマックには行きません。プレミアムローストコーヒーのクーポンが何枚かたまるとマックに行くのです。以前は二日に一回くらい当たっていたのに、最近は一週間当たらないときもあって、マックから足が遠のいています。

にわか雨に事前に対処


あめふるコール(無料)LINE 天気は、住所を登録しておくと、「間もなく弱い雨が降りだします」 「本降りの雨が降りだします」というメッセージを、チャイムとともに通知してくれます。 患者さんの治療の合間に、前もって洗濯物を取り入れられるようになりました。

あめふるコールは誤報が多いし、LINE 天気は直前か雨が降りだしてから通知されるときもあるので、どっちもどっちです。

スケジュール管理に

簡単メモ帳は、カレンダーの日付をタップして自由にメモを書き込むことができるので、スケジュール管理に重宝しています。

話題に乗り遅れないために


LINE NEWSは、ニュース速報をプッシュ通知してくれます。また、朝・昼・夜の指定時刻にニュースを配信してくれます。テレビのニュース速報のテロップを読めない視覚障害者にとって、とてもありがたいアプリです。

日常生活に便利


色判定(Color Picker)は、カメラで撮影した物の色を教えてくれるので、全盲でも色を確認できます。


ICタグ・バーコードリーダーは、バーコードが書かれている物をカメラでスキャンし、製品紹介のホームページにアクセスできるアプリです。

箱や袋に入っているものが何かを全盲でも確認することができるので、ワクワクします。

また、QRコードを読み取って飲食店でクーポンを使うこともできます。


ドキュメントトーカ NFCトークは、タグをかざすことでさまざまな用途に使用できます。

出発地と目的地をタグに書き込んでおくと、Yahoo!乗換案内を起動し、これから乗車できる電車・バスの時刻や経路を検索してくれます。また、タグに電話番号を登録しておくと、かざすだけで電話してくれます。

タグニ必要な内容を登録してから外出すれば、あせることなく行動できて便利です。

アイディア次第で、NFCタグはいろんな使い方ができると思います。


EMoneyReaderは、電子マネーの残高を確認できるアプリです。コンビニや改札口などで、残高が不足していて恥ずかしい思いをすることがなくなります。

スマホの通話料を節約

スマホには無料通話料がありません。

最近はかけ放題プランに移行しつつありますが、私のように長電話をしない物にとっては基本料金が高くてメリットはありません。

G-Callに申し込むと、同一キャリア間の無料通話やファミリー通話以外の通話料金が半額程になります。

アプリを起動してから電話帳や連絡先を呼び出せば、自動的に0063を付加して発信してくれます。

スマホのバッテリーを節約

スマホはパソコンと同じで、電源を入れておかないと動いてくれません。携帯電話のように、自動で電源を入れてアラームを鳴らしてくれるような機能はありません。

また、常駐アプリが多かったり、GPSや無線ラン機能がオン状態だと常にバッテリーを消費します。

高級タスクマネージャは、除外リストに登録してあるアプリで常駐が必要ないものをチェックして終了してくれます。

iBatteryは、画面オフ(スリープ状態)になると、モバイル通信を停止してくれます。アラームや通常の通話、SPモードメールの受信はできるようです。



ボタンの見つけ方


スマートホンでは、視覚障害者に使いやすい最適化された画面は存在しません。 逆に言えば、視力がある人にならだれにでも画面を見てもらってレイアウトを教えていただくことができるわけです。

検索ボタンは、画面の右上端にあることが多いです。

ダイアログは画面中央に出ることが多く、「OK キャンセル」と音声ガイドがあったときはOKが左でキャンセルが右、「キャンセル OK」という場合は位置が逆です。

「OK」だけの場合は画面の下端にボタンがあることが多いようです。


スマートホンの操作に馴れてきたら


トークバックの設定で「音で知らせる」「バイブで知らせる」をOFFにすると、動作が軽快になります。

また私は、「バイブレーションまたはマナーモード時は読み上げない」も設定しました。

「近接センサーで読み上げを停止する」設定は、読みが止まらないときには手をかざすだけで黙ってくれて便利なのですが、最後まできちんと読んでほしいときにも何かの拍子に黙ってしまうため、私は設定していません。


スマートホンがしゃべってくれなくなったときは・・・・・


バイブレーション着信、マナーモード着信モードになっていませんか?

ギャラクシーでは、電源キー長押しで「端末オプション」を表示させ、ボリュームアップボタンを数回押すと、音声が出るようになります。

※画面OFF状態でボリュームキーを押すと、着信音などとは別にドキュメントトーカの音声ボリュームを調整することができ便利です。



「デカプーの気まぐれチャレンジ」のご紹介

デカプーさんが、初心者にもわかりやすく、ネトラジでアンドロイドスマートホンのデモをされています。生放送中には、ツイッターで質問を受け付けて下さっていて、私も勉強させていただいています。

過去の放送分もデカプーの部屋で聴くことができますので、これからアンドロイドスマートホンを使おうという視覚障害者の皆さん、サポートしていただけるボランティアの皆さんはアクセスしてみて下さい。


JG5GQSさんのスマホデモのご紹介

研究熱心なJG5GQSさんが、いち早くスマホを購入され、デモを公開されています。

ときには、外出先からスマホを使ってネトラジで生放送されることもあります。

スマホの画面イメージを丁寧に説明して下さっていますので、スマホに馴れてきたら、GQSさんのページにもアクセスしてみて下さい。


最後に


Windows8では、スタートメニューが廃止され、スタート画面が採用されました。 今まではツールバーやアイコンの位置を意識しないでパソコンを操作できていましたが、これからはボタンの位置や大きさなども把握しないと操作できなくなると思います。 スマートホンでは、雑多にアイコンやボタンがあるので操作は大変です。OKやキャンセルのボタンも左右逆だったり、画面中央だったり下端だったり・・・・・検索ボタンのような小さなアイコンを探すのも大変です。

しかし、これからはタッチパネルを採用する製品はますます増えると思います。部品を減らすことで価格を下げ、レイアウトも自在にできるからです。

視覚障害者スマートホンのタッチパネルに馴れることは、今後家電やデジタル楽器を操作できるようになるためにも、よい訓練になるような気がしてきました。

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